ブランキーの映画「VANISHING POINT」を観た

少し前に、Blankey Jet Cityのドキュメンタリー映画、VANISHING POINTを観に行った。

 

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観客は30代が多かった気がする。上映数が少ないのもあるかもしれないが、満席に近かったように思う。目の前には70代くらいの二人のお婆さんが座っていたのでびっくりした。

このドキュメンタリーは、ブランキーのラストツアーを追っている。

いつその緊張の糸が切れてしまうか分からない、危うく、そしてピリピリとした緊張感に溢れる演奏を続けていたブランキー。ツアーを追っていくことで、ガッチリ決まった時の演奏、息が合わずに崩れてしまう演奏、そしてそれを立て直そうと音で会話し、探る演奏。そんな三人の姿があらわに描かれている。


Blankey Jet City 映画「VANISHING POINT」予告編(劇場版)


僕もブランキーには遠く及ばないものの、バンドマンの端くれとして、「音で会話する」ことは分かる。
ロックバンドというのは、同じ曲を演奏していても、毎回何かが変わる。プロフェッショナルなバンドなら、いつもほぼ同じ演奏ができるだろう。でも、ロックバンドがそうであっては、どこかつまらない。その点ブランキーは、分かりやすすぎるほど、時にポジティブにもネガティブにも、何かが違うことが如実に表れる、とても正直なバンドだった。だから本能という文脈とともによく言及されたんだろう。

この映画では、ベースの照井さんがよく映っていた。人によっては、照井さんは寡黙で地味なベーシストに見えてしまうかもしれない。だが実際にはとても熱い人で、危なげなブランキーの演奏をしっかりと支えている。そして照井さんを見ていれば、ライブの良し悪しが分かる。照井さんがノッていれば、バンドのテンションは最高潮だし、不満そうにしていれば、三人は何かを探っている音になる。だから、このドキュメンタリーでは照井さんを映す場面が多くなる。それによって分かりやすく、バンドが繰り広げる音の会話を観せてくれる。

映画の中では、何度もセッションのシーンが登場した。

ある時から息が合わなくなり、崩れた演奏に苛立ったり、楽屋で一触即発の状態になりながらも、少しずつ音で探り合っていく三人の様子は、スリリングだ。この緊張感こそが、自分の好きだったブランキーだった。

そしてこの映画のクライマックス、音の会話を繰り広げていったブランキーは、解散を目前に最高潮の状態でセッションを始められるようになる。そのセッションを終えた後、それでライブは終了だったはずが、その勢いで赤いタンバリンを演奏し始めてしまった。涙が出た。

思春期をブランキーの音楽と過ごせてよかった。本当に大事な時間だったことを思い出した。

 


BLANKEY JET CITY - 赤いタンバリン 1999.12.21